移民で作るスピーカー

オリンピックカラー

赤井電機は自社でスピーカー工場を持っていませんでしたので、世界中のスピーカー工場にスピーカーの生産を委託していました。 
特に80年前後の、フルサイズセットと言われた,ガラス付きのラックに入ったオーディオセット用のスピーカーは、ラックに合わせて、スピーカーも高さが70cm~90cmと大きく、アンプなどは日本で作って送るけど、スピーカーは運送費を抑える為、最終消費地の近くで作る事が多くなりました。 
これらのスピーカーは本格的な単品スピーカーと異なり作りも簡単で(とはいっても作りは簡単なのに、そこそこの音を出さなくてはならないので、設計は苦労しました)、スピーカーユニットやネットワークなどは日本から送り、現地ではキャビネットを接着剤などで組み立て、それに吸音材を入れて、スピーカーやネットワークをネジで取り付け、検査して梱包すれば良く、作業員はそれほど経験を必要としませんでした。

アメリカのある工場では作業員のほとんどがメキシコからの不法侵入者でした。 不法侵入なので、見つかればすぐにつかまります。 この為、簡単には会社をやめる事が出来ず、その分安く使えて良いと言ってました。 製造ラインは50人以上の長いラインで、作業は一人1工程と単純化して誰でもすぐに作業できるようにしていました。今までネジ締めなどしたこともない人にすぐにほとんど訓練せずにすぐに働いてもらうためです。
オーストラリアのシドニーの工場もアジアからの移民がほとんどでした。 ベトナム人などよく働くが、よくしゃべるので、隣の作業員は必ず言葉の異なる人種にして、作業中に無駄話をさせないようにしていました。
一方同じオーストラリアのメルボルンの工場?はまさにガレージ工場で、ニュージーランドからVカットという木工加工も終わらせたものを持って来て、作業員たったの3名で組み立てていました。
フランスのある工場では、部品の前工程を刑務所作業で行ってもらい、かなり安く仕入れると言ってました。 
私は行ってませんが、アフリカのナイジェリアでの組み立てでは、最終検査に音楽を鳴らして確認するけど、ポップスなどを使うと検査せずに踊りだしてしまうので、検査は演歌で行うと言ってました。
日本のある会社では、スピーカー工場のほとんどの作業員が知的障害などの人達でした。 これは人件費を抑えるというより社会福祉的な意味合いを込めて行っているとの事でした。 人間は頭の良い人もいれば悪い人も正規分布のようにある一定の割合で必ず発生します。 知的障害者の多くは本人の意思に関係なく生まれながらにしてこの正規分布の端に当たった人で、その中でも比較的軽度の人は訓練すれば単純作業などこなせるようになります。 人によっては健常者以上に真剣に一つの作業に打ち込むようになり、又工場で訓練していくうちに一般の社会でも自立できるまでになって巣立った方も何人かいるとの事でした。といっても日本では単純作業のある工場そのものが海外に太刀打ちできず、国からの援助が無いスピーカー業界などではこういった工場も閉鎖せざるを得ないのが現状です。 国から有形無形の援助をたくさんもらって日本での既得権を守っている業界には是非積極的にこういった人たちの働く場を作って欲しいと思います。

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