ブリティッシュサウンド

ひろしの油絵

スピーカの音は国により大きく異なります。
JBLに代表されるような、アメリカのスピーカーは、ジャズなど楽器の音が鋭く気持ち良く鳴ってくれますし、ドイツのスピーカーは総じてベースギターの音が気持ち良く鳴ります。 南米などは音質よりもとにかく高能率で大きな音の出るのが良しとされました。 高能率のスピーカーはハイファイとは別次元ですが、それはそれで気持ちの良い音です。
北斗音響の視聴室には各国のスピーカーをスイッチボックスで切り替えて比較視聴できるようになっていました。
イギリスのスピーカーは、スペンドールのスピーカーが置いてありましたが、他のスピーカーが総じて音がどんどん前に出てくるのに、スペンドールに切り替えると能率も低く、音が奥の方でもやもやなる感じで、確かに広帯域だけども良さが分かりませんでした。
AKAIで何年か経ったとき、ミニコンポだけど、音の良いスピーカーをメインのコンセプトにした事がありました。 この時ばかりはデザイナーも極力デコレーションを排し、音作りに協力してくれました。 実はスピーカーは形状からくる音の反射や回析、マスキング効果や材料の固有音など、そしてコストの割り振りなど、デザインが音に直接影響します。 素のままのスピーカーが大抵一番良い音なのですが、それでは商品になりませんので、その匙加減もスピーカー作りには重要なのです。
スピーカーがある程度出来上がったので、今回の企画に一番乗り気だったイギリスの現地法人にサンプルを送り、スピーカーの音を聞いてもらいました。 そうしたら、まだまだジャパニーズサウンドだと評されてしまいました。 イギリスの現地法人には社員の中に、ワーフデルというイギリスの名門スピーカ会社でスピーカー設計に携わっていたエンジニアがいたので、そのエンジニアの家で、1週間ほど一緒に音作りをさせてもらいました。 日本からネットワークや吸音材などの部品、そして簡単な測定器などを持ち込み、一緒に音のチューニングをするわけです。
家のリビングは70㎡ほどあり、KEFの105というモニタースピーカーが置いてありました。 早速一緒に音を聞いて、悪い所などあれこれ話あい、少しずつ調整していくわけです。 一緒に音を聞くとイギリスのエンジニアと私とで、音の良し悪しの感じ方はほとんど一緒で、二人であれこれいじり、1週間後には二人とも満足する音になりました。 音作りは主にオーケストラの曲で、音の定位や広がり、ティンパニーの音の自然さなどを評価します。
出来上がったスピーカーをイギリスの現地法人に再度持ち込み、みんなに聞いてもらったところ、非常に良いスピーカーだと満足してもらいました。 私も一緒に聞いていて、確かに本当に良くなったと不思議な感じでした。 決してイギリス人の耳や感じ方が私と違うわけではなかったのに、聞く部屋やモニター(日本ではJBL 4343やダイヤトーンなどをモニターに使用していました)、評価に使う音楽の違いなどで、出来上がる音がまるで変ったのでした。
自信の持てるスピーカーが出来たので、仲の良い香港の代理店に送ったところ、なんと、”このスピーカー、壊れてるんじゃないか? ” と評されてしまいました。
イギリスでは非常に評価されたんだと伝えたところ、早速何名かの香港の評論家に評価してもらい、やっと良い音だと納得してもらいましたが、結局香港では全然売れませんでした。

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